大阪大学 先導的学際研究機構 DX社会研究部門

大阪大学 先導的学際研究機構 DX社会研究部門

部門紹介

研究部門のミッション

情報技術はあらゆる研究分野において必要不可欠の技術になっている。特に最近では、デジタル変革(DX)、すなわち、デジタル技術の活用によって組織における情報処理のプロセスを変革していくことが期待されているが、それだけでなく、組織構造や社会構造そのものを変革する可能性も指摘されるようになっている。大阪大学においても第4期中期計画ではOUDXとして、教育研究や社会共創の変革を促すものとしてデジタル技術の活用が謳われ、安全かつ快適で持続可能なキャンパスの整備促進が計画されている。

一方で、情報技術が社会課題解決の基盤になった結果、情報科学分野の研究者だけでは解決できない課題は数多く存在し、情報技術を必要とするさまざまな分野の研究者との共創が不可欠になっている。いわゆる共創イノベーションなくして、情報科学の一層の発展は望めない。同様に、情報科学以外の他分野においても、AI技術の活用やビッグデータ処理を行うというだけでは新規性のある研究として認められず、情報技術のさらなる高度化を前提とした課題解決が求められる状況になっており、他分野においても情報科学との一層の連携が必要になっている。

そこで、これまでにすでに実績のある研究分野を中心に、以下の領域をまず設定し、今後必要に応じて領域の改廃を行うこととする。

    • DXプラットフォーム研究領域:DX推進のための情報処理基盤の高度化
    • DX通信基盤研究:Beyond 5Gを中心としたDX推進のための通信基盤の高度化
    • 知的DX研究領域:DXにおけるAI・ビッグデータ活用
    • 産業DX研究領域:デジタルツイン等によるDXの産業応用
    • 都市DX研究領域:スマートシティ等都市DXの推進
    • 健康DX研究領域:DXの医療・健康応用

DX研究推進においては、社会における技術のありかたそのものを議論する必要があることから、大阪大学の社会ソリューションイニシアティブ (SSI)や先導的学際研究機構「「新たな防災」を軸とした命を大切にする未来社会研究部門(以下、SSI部門と略記)」の関係者にも参画いただいている。特に都市DX研究領域では、SSI部門の防災に関する研究成果を活用しながら、スマートシティのための情報技術活用に関する研究を推進していく予定である。

また、若手研究者の育成は当然のことながら重要なミッションになるが、そのスキームについては、現在、情報科学研究科において推進している「若手研究者育成パッケージ」を活用する。

国内外の当該研究分野の動向と当該組織の位置付け

大阪大学は、情報科学分野において国内2位(論文数や科研費獲得額等の指標に基づく)、特にソフトウェアやネットワークなどの基盤分野においては国内1位の実力を持つ。しかし、現在、情報科学を主たる研究分野とする研究者は情報科学研究科、工学研究科、基礎工学研究科やその他の部局に分散し、組織的な強みを発揮するには至っていない。大阪大学の個々の研究者の研究力を一層高めながら組織の力に結びつけるために、大阪大学の情報科学分野並びに関連する研究分野の研究者を結集し新たな学術領域・融合領域を発展させるための共鳴の場が必須である。

さらに、現状においては、情報科学分野の研究者が散在するが故に、産業界と社会課題を解決するための組織対組織の関係構築が困難な状況も多々発生している。産業界との協働により新規産業の育成に資するためにも、情報科学分野や関係する分野の研究者が結集する研究組織が必要である。

本分野の活動は、OUマスタープランにおける「社会課題の解決、新たな社会価値創造を目指した組織間連携の拡大」「卓越研究分野が先導する部局横断型大型研究プロジェクトの醸成」等に完全に合致するものである。さらに、これらの活動による情報科学分野の研究力強化によって、大阪大学の情報科学分野におけるブランディング戦略の一環として位置づける。

これまでの実績

2020年度に理工情報戦略会議がまとめた「重点的に取り組む分野、異分野融合・学際領域の研究」において、情報科学が重要な位置を占める4つの融合領域分野として「ビッグデータと人工知能の融合」「仮想世界/実世界融合基盤と実世界応用」「リブートコンピューティング」「脳情報通信」を掲げている。これらはいずれも、情報基盤/応用情報(情報科学、他)、科学的手法(基礎工学、生命機能、他)、工学的手法・産業応用(工学、他)の融合によるネットワーク型の研究展開を必須とするものである。本部門において設定している研究領域はこれらの課題から選定したものであり、提言において示された理念に完全に合致するものである。

また、これまで産学連携活動として、情報科学研究科ではNECブレインインスパイアードコンピューティング協働研究所、NEC Beyond 5G協働研究所、スマートコントラクト活用共同研究講座、数理最適化寄附講座を、また、サイバーメディアセンターでは高性能・データ分析融合基盤協働研究所を設置している。これらは、本部門における成果を活用するための基盤になるものである。

活動目標

  • 各研究領域は融合的課題そのものであり、部局をまたいだ融合研究を推進する。
  • 新たな融合課題の掘り起こしのため、研究者の交流会を定期的に開催し、競争的研究費の獲得や企業との共同研究に繋げる。
  • 若手研究者育成のために、融合課題を必須条件とした研究課題を公募し、助成を行う。
  • 大阪大学をリビングラボとしたDX基盤を整備することによって、研究成果の実証実験環境に資する。ただし、基盤整備においては、プロジェクト単位で導入した機器を共用で使用可能にするための課題もあるため、大学本部や関係省庁への働きかけも必要である。
  • 年1回開催するシンポジウムを以上の活動に対する研究成果発表の場とする。

目標達成に向けての工程

スマートキャンパスの基盤整備を進めながら、大阪・関西万博を活動成果の中間発表の場とし、大学DX(スマートキャンパス)や都市DX、産業DXの発展の礎とする。